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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(あ)2459号 決定 1960年8月12日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人山崎一男、同井本良光、同木内曽益の上告趣意第一点は、判例違反をいうけれども、所論引用の判例はいずれも本件と事案を異にし適切を欠き、所論の内容は単なる法令違反及び事実誤認の主張をいでず、第二点は単なる法令違反、第三点は事実誤認の主張であって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

なお第一点の一について。記録によれば、第一審判決認定の犯罪事実と起訴状記載の公訴事実とは具体的には同一の事実であり且つ判決の摘示せる自己(被告人ら)の利益を図る目的をもってした背任行為と訴因として明示された第三者(猪股)の利益を図る目的をもってした背任行為とは、具体的な本件においては全然無関係の行為ではなく、いわば主従、表裏の密接な関係にあることを窺うに足り、かかる事実関係にある本件において、記録上明らかな原判決指摘の訴訟経過に徴すると、第一審裁判所が訴因変更手続を経ないで、訴因と異なる事実を認定したからといって被告人らのそれまでの防御を徒労に終らせるような不意打を加え、その防御権を実質的に侵害したものとはいえない。所論の点についての原判示は正当である。

更に第二点につき。被告人らの本件融資行為が専ら本人たる日本通運株式会社の利益を図る目的に出たものであるとの主張事実は原審の認めないところであるのみならず、原判示の如く主として不法に融資して自己の利益を図る目的がある以上、たとえ従として右融資により本人のため事故金を回収してその補填を図る目的があったとしても背任罪の成立を免れないものと解すべきであるから(昭和二九年一一月五日第二小法廷判決、集八巻一一号一六七五頁参照)、本件融資行為につき背任目的がありとし、商法四八六条一項違反の犯罪の成立を認めた原判示は正当である。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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